情報工学科 永野 宏治
最近,私たちは,分からないことや知らないことを調べる時にまずインターネット検索(Google等)を使うことが多いです。では,知識を得る・身につけるために,はたしてインターネット検索は有効なのでしょうか?
私は,インターネット検索による勉強は益が極めて少ないと思います。本をとことん読んで考えることが私は大切だと思います。そして,様々な本に出会える場所が図書館です。
それでは,インターネット検索による勉強の問題点を本と比較しながら述べます。
インターネット上の情報はほとんどが体系化されていません。情報が断片化されているため,その情報群から知識への体系化はほとんどが読者まかせになります。
一方,本では,著者が題材を取捨選択し体系化をおこなっているため,目的の情報の前後を読むと自然と知識が体系化される仕組みになっています。また,本の著者は多くの場合その道の専門家です。その著者の豊富な経験(研究及び教育に関する)とその著者の個性を反映した題材選択と記述が本にはあります。(しかし,厳密さや著者の知識を追求するあまり,読者を忘れているかのような本があるのも確かです。) 最近は,大胆な説明で解りやすく,かつ本質を失わない本も多数出版されていると思います。
繰り返して学ぶことがない。インターネット検索の結果は多くの場合,モニターに1回だけ表示して終ることが多いでしょう。
我々は、1回読んだだけで知識を得ることはまずありません。1つのことを日をおいて繰り返し読み考えることにより,その知識を獲得できます。その知識を頭の中でさらに血なり肉なりにするには,様々な側面からその知識を繰り返して考えること以外に方法はないと思います。この作業を行うにはモニターに一回こっきり表示された情報は不向きです。
私は,大学4年生や大学院生の時に一所懸命読んだ本を今でも手にとります。その本を読めば,忘れかけていた知識は極めて短時間で思い出すことができます。これは一所懸命読んだ本だからこそ可能です。インターネット検索で得た知識とはいえ永遠に頭に残ることはありません。いつか忘れるはずです。その時にどうやって再び学ぶのでしょうか?
検索結果だけをコピーして満足しやすいです。関係ありそうな個所をマウスでカットアンドペーストしてレポートがハイ完成。そこにはマウス操作だけしかないと思います。自分の体と頭を動かしてこそ生まれる疑問を作り出す行為がありません。
インターネット検索の良い点も述べます。
最新の情報を得るにはインターネットです。アカデミックな研究成果やコンピュータシステムの最新情報は,その研究者や開発者のウェブサイトにあります。その情報が雑誌や本になるには数ヵ月から数年待たなければなりません。
コンピュータの操作方法を調べる時,インターネット検索は極めて便利です。知っていても大したことはないが,知らないと途方もなく難儀するのが,コンピュータの操作方法です。メーリングリスト・アーカイブやメーリングリスト検索は極めて重宝です。私の研究室でも,「研究室の知恵袋」としてコンピュータの操作方法の備忘録を公開しています(http://lwave.csse.muroran-it.ac.jp/)。私の研究室では,研究室にあるコンピュータの操作が判らなくなったら,ここを見ることにしています。コンピュータの操作方法の情報を得るにはインターネット検索が独壇場です。
結局は,インターネット検索と本は,その長所と短所をわきまえて,使うのが大切だと思います。
(ながの・こうじ)